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それ行け!早乙女研究所所属ゲッターチーム(TV版)!

70年代ロボットアニメ・ゲッターロボを愛するフラウゆどうふの創作関連日記とかメモ帳みたいなもの。

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サイト更新しました(*˘◯˘*)

サイト更新しました!
http://yudouhu.net/
今回の更新は、いよいよ角面鬼三馬鹿兄弟がやきう場へ…
千葉ロッテマリーンズの本拠地「ZOZOマリンスタジアム」に向かいます!
続きはできれば8月中に書き終えてしまいたいなー

ゲッターロボ無印のほう、恐竜王女ゴーラの物語「恐竜王女の御幸」もボチボチ書いていきます
この物語は、ブログで何回か書いたように、
ゲッターの物語に矛盾を生じてしまう、しかしながら、人間とハ虫人との間に立つ、彼女の哀しい決断の物語です。
できれば、この物語で、自分なりに矛盾を解決していきたい。
また、可能であれば、トリックスターである「大枯文次親分」も出したいな、と思っています。
あの人、本当に根性あると思いますよ(*˘◯˘*)

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恐竜王女の御幸(ミユキ) 運命は彼女を選択した

恐竜王女の御幸(ミユキ) 運命は彼女を選択した

人間たちがこの世の春を謳歌している、地上。
その遥か下。下。下の下の下。
灼熱のマグマが広がる地層に、とてつもなく巨大な街…いや、国がある。
ヒトならぬ、だが二足で歩行し、高い知能を持ち、秩序と社会を持つイキモノが生きるその国…
ハ虫類から進化した彼ら、ハ虫人たちの国…恐竜帝国。
まだ人間がネズミの親戚であったころ、彼らこそが地上を我が物顔に歩き回っていた時代があった。
それこそ、高度に発達した文明を持ち、自然と調和し…
しかしながら、彼らの歴史は突然、闇一色に塗りつぶされる。
怨嗟と悪夢、憎悪と混沌が、彼らのきらめく未来を塗りつぶす。
それはかつて、ただの地を這う蜥蜴だった自分たちを、知性あるイキモノへと変えた…
「知恵」を与えたはずのモノ、だった。
目に見えぬ邪悪が、天空に荒れ狂い。
音も鳴らぬ悪辣が、人々を傷つけ殺し。
ハ虫人たちは苦悩し、苦悶し、苦難の果てに…地上の楽園を捨てた。
持てる限りの技術力を駆使し、地下の世界へと逃げ去った。
眩しいばかりの太陽の光は、もう見ることができない。
陽光に照らされる地上は、最早あの邪悪なる女神の世界―


ハ虫人たちは、この屈辱の歴史を、「神話」の形で子孫たちに伝えた。
自分たちを地獄に叩き落した女神を、その神話の中でこう呼んで―



「滅びの風(El-「風」raine-「滅び」)」



だが。
ハ虫人たちの願いは、変わらなかった。
地上への憧れは、代を経て、また代を経て、強くなっていく。
あの世界へ。
太陽のきらめく、あの世界へ。
そう、いつか、今度こそ、あの邪悪なる女神の呪いを克服して―!



「…それは誠、なのか」
恐竜帝国・帝王の間。
報告を受けた帝王ゴールの表情は、硬く硬く強張っていた。
大司祭から受けた言葉が、あまりに唐突すぎ、そしてあまりに…残酷すぎたため。
「…はい」
老いた大司祭は、帝王の威厳の前にひれ伏しながら。
それでも、己が受けた神々からの言葉を伝える。
その衝撃的な言葉に色めきだったのは、帝王に使える重臣たちだ。
帝国軍大将バット将軍、科学技術庁長官ガレリイ長官…
普段は反目しあい足を引っ張りあう、まさに犬猿の仲たるその二人も、同じことを老婆に怒鳴っていた。
そう、それほどまでに、彼女の言葉は許されざる、まさに不敬なる言葉。
「何と言うことを!お主、自分が言っていることがわかっておるのか?!」
「『賢(さか)き尖兵』として、あの…ゴーラ王女様を送るべき、だと?!」
恐竜帝国の命運をかけた地上侵攻作戦、その第一歩。
その状況を探るべく放たれるべき、恐れを知らぬ勇者。
魑魅魍魎の跋扈するだろう、人間どものあふれる地上に送るべき人物。
それが、何故…
「馬鹿げておる、危険すぎるわ!何故、王女様でなくてはならんのじゃ!」
「それを問われたとて、このおいぼれに何がわかろうか!」
しかし、大司祭とて、罵倒されたとしてもそう言い返すことしかできない。
彼女は帝王の命どおりに神々に祈り、そして得た答えを伝える。
たとえ、神々が下された答えが、どんなに非道なものであったとしても。
「…ただ、宣託が。そう告げたのじゃ…それを、ワシはそのままお伝えしておるのみ」


彼女が帝王ゴールから受けた命。
旧き神々に祈り、託宣を得よ、と。
永い眠りの後、再び訪れた活動期…
ハ虫人の長年の悲願たる地上制圧、それを正しく成し遂げるために、まずは地上の状況を知らねばならない。
そのために送り込むべき、勇敢なる「賢き尖兵」…
それに選ばれるべきは誰なりや?
旧き神々は誰をお示しになるのか?


「やりなおせ!そんなもの、何かの間違いに決まっておる!」
「言われずとも!」
バット将軍の指弾に、きっ、と老婆は睨み返し、怒鳴り返す。
「言われずとも!ワシは…何度も祈り、神々に答えを乞うた!」
何日も、何日も。
同じ問いを偉大なる神々に繰り返す、という愚行を犯してすら。
だが、彼女がそうせざるを得ない、それほどまでに神々の答えは残酷だった。
「だが、同じじゃ…幾たび繰り返そうと!神々の示す答えは、ゴーラ王女様を指す!」
なじられる老婆は、目を怒りに爛々と燃え上がらせながら、それでも言を変えない。
彼女自身が出した答えではない。
そう、これは、旧き神々が与えた答えなのだ、と。
「この答えが意に添わぬなら、今すぐワシを斬り殺し、別の者に占わせればよかろう。
この婆が偽りを申しておる、そう思うのなら!」
老婆は曲がった腰を、それでもしゃん、と伸ばそうとしながら、はっきりと言い放つ。
その顔には、自負。
この祭政一致の国家たる恐竜帝国において、長きにわたり神々の言葉を承る司祭として生きてきた、という自負。
―すなわち。
神託に間違いはない、という自信。
たとえ神々が命じる内容が、どんなに酷薄なものであろうとも―


「…」
「…」



「だ、だが…ゴーラ王女様は、帝王ゴール様の長女であらせられる…王位継承権を持つ方を、そんな役目になど」
バット将軍の喉から、かすれ声が反論を絞り出す。
何より帝王の子は、次代を担うべき存在。
帝王を継ぐべき存在が、もし地上で果ててしまったら…?
「…王位継承権で言えば…『第二位』、でいらっしゃる」
「!…貴様、」
が。
ガレリイ長官がぽつり、と漏らした一言に、バット将軍の表情が変わった。
しかし、帝王の御前…バットとて根っからの阿呆ではない、その次に続くセリフは飲み込んだ。


―すなわち、「王位継承権『第一位』ではないから、たとえ死んだとしても問題ないと思っているのか?」と。


恐竜帝国は古く長い歴史を持つ…
そう、それこそ、現在地上に大量に蠢いているサルどもの子孫のものよりも、遥かに長く。
それ故、王政を構築する規範やしきたりも、また多く、古く。
帝王ゴールには、御子が二人。
長女は、ゴーラ…側室のひとりの生んだ、娘。
長男は、ゴール三世…正室の生んだ、息子。
恐竜帝国の長きにわたるしきたりは、彼らのたどるだろう未来を、彼らがこの世に生まれ落ちた瞬間に塗り分けていた。
恐竜帝国の帝王となるべきは、まず、男子。
そして、第一夫人の子女たるべし、と。
そのルールは、暗にゴーラに告げている。
お前はあくまで「王位継承権第二位」、ゴール三世に何らかの事態が起こった場合の「スペア」なのだ、と。
だが…


…がんッ。


はっ、となった二人が見返る先には、玉座におわす帝王。
不愉快気に玉座のひじ掛けをこぶしで打った鈍い音が、強制的にガレリイたちの会話を終わらせた。
必然的に、帝王の間には静寂が満ちる。
不愉快な、居心地の悪い、音のしない、間。
いや、その場にいる誰もが、帝王の様子をびくびくと伺っている…


「…帝王ゴール様」
「…」
「我々は、一体…どうすれば」


その間を割ったのは、困惑に満ちたバット将軍の声。
帝王は、無言。
将軍も、それゆえに、それ以上の言を継げない。
再び、生ぬるい無言がその空間を満たす。



「…」



十数秒か。数十秒か。それとも、それは数百秒か。



「…わかった」



―ようやく、と。
その、居心地の悪い空白を断ち切ったのは、吐息交じりの声。
帝王ゴールは、いったん目を伏せ…
再び眼見開き、一息で答えを吐き出した。
己の迷いも全て、捨て去らんとしているかのように。


「偉大なる神々が、我々にそう告げたのならば」

「…それに従うことこそ、この恐竜帝国の栄光がため」


「えッ?!」
「ゴール様!」
ガレリイ長官、バット将軍の両者ともが、動揺もあらわに声を上げる。
帝王はおっしゃられたのだ。
愛娘を地上への間諜として送り出す、と。
邪なる人間どもの蔓延る、あの場所へ…
それは、種族の命運を賭けた大きな作戦であり、また重大な選択。
他の者ではなく、彼の方自身の血を分けた者を、と…
…嗚呼。
だが、見よ。
偉大なる帝王の、その表情を。
その眼には光なく、感情を押し殺すあまりに、その表情はもはや色すらない。
「ゴーラにはわしが伝える」
「…」
「ガレリイ、バット。『賢き尖兵』を地上に放つための準備にかかれ」
「は、はっ…」
だから、それ以上バットたちも何も言えはしない。
何が言えるだろう、覚悟をした帝王を前に、親を前に。



「神々が、ゴーラを選んだのならば…」



帝王ゴールの声音は、厳かで落ち着いていた。
だが、だからこそ―傍仕えの者たちは確信する。
それは、諦念。そして、信念。
恐竜帝国の彼岸・地上進出を達成するために、己が愛しい娘を犠牲にするという―!



「その加護が、必ず。我が娘をお守りくださるだろう」



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百鬼百人衆角面鬼兄弟、やきう場に推参す。ZOZOマリンスタジアム編1

「はあ…」
「やっと見えてきた…アレ、だよな?」
「うん、兄ちゃん」
空の青、雲の白。
蒼天が凝結したような、さわやかなこの二色にぱっきりと塗り分けられた、巨大な建物。
角を隠し、人間に偽装した角面鬼兄弟…重い足を引きずって、ようやくスタジアムの姿が肉眼で見えるところまでやってきた。
そう、彼らはここまでの長旅ですっかり疲労してしまっていた。
東京の海岸外れ、人目につかない場所に潜水艇を止め、そこからまず東京駅まで電車で移動。
彼らの国である百鬼帝国にはない、その長くうねうねとした乗り物に興奮していたのも最初のうちだけ…
東京駅までも長かったが、次の乗り換えのために京葉線のホームまで移動する、その構内移動もまた長い。
さらに40分ほど電車に揺られ、やっと目的地の最寄り・海浜幕張駅に到着するも…
またそこからまだまだ歩かなくてはならない。
(マリーンズの公式サイトには海浜幕張駅から徒歩15分と書いてあるが、嘘だぞ絶対20分はかかるぞ)
…というわけで、さすがに彼らはへとへとになってしまったのだった。
それでも、ずっと行ってみたいと焦がれていた「ヤキュウジョウ」がもう目前なのだ…
長い歩道橋を歩いて交差点を渡れば、緑に囲まれたその向こう…三角鬼が指差す先に、夢の舞台が見える。
「あれが…ZOZOマリンスタジアム、だよ」
「…!」
兄弟の網膜に、その青と白が映り込む…
はあ、と、思わず二角鬼がため息を漏らしたのは、感嘆か、それとも安堵か。
「遠かったな…」
「すっごい海沿いじゃん、そこの海岸に潜水艇を止めれば」
「馬鹿野郎、人目に触れちまう」
わやわや言いながら階段を下りていく三馬鹿兄弟、だがその時。
「あっ…」
目を見開いた一角鬼、彼の目に映ったものは…
「…。」
「…。」
思わず、無言になってしまう三人。
それは、「ZOZOマリンスタジアム行」のLED掲示も鮮やかな白青のバスが、たくさんの乗客を乗せて軽やかにスタジアムへ向かっていく姿…
そう。
海浜幕張駅からは、おとな100円こども50円のスタジアム直通バスがあることを、彼らは全く知らなかったのである。





「わあー!」
「おお、こりゃすげえや!!」
それでも、スタジアムの正面に立った瞬間…今までの疲れを溶かしていくほどの興奮と喜びがわいてくる。
行きかう人間どもは、ヤキュウの戦闘服である「ユニフォーム」を着ているし、「ヤキュウボウ」をかぶっている者もいる。
若者だけかと思いきや、少年たちや親子連れ、年季の入ったユニフォーム姿の老人…
まさに老若男女問わず集っているのだ。
ここは、ZOZOマリンスタジアム。
この日本に12ある、ヤキュウで生計を立てるプロ集団…その一つ、「千葉ロッテマリーンズ」の本拠地だ。
とうとう、本物のヤキュウが見られるのだ…
百鬼帝国にはないスポーツ、「ヤキュウ」。
怨敵ゲッターチームが一員・車弁慶に近づくために、自分たちは一級資料「巨人の星」を読んでそれを学んできた。
けれど、もうそれだけじゃ物足りない。湧いてくる気持ちは、最早作戦のためだけのものじゃない。
自分たちでもやってみたい。
そして、見てみたい…プロのやるヤキュウを!
「…やっと、来れたな」
「ああ!」
うれしそうに言う一角鬼。力強くうなずく二角鬼。
「巨人の星」を読んで想像するだけだった舞台は、今ここにあるのだ。
「兄ちゃん!何か食べたい!」
―と。
三角鬼のすっとんきょうな声が、二人を現実に引き戻す。
彼はカラフルなテント群を示し、目をきらきらと輝かせている…
「おおー」
そのどれもこれもから、ほんわかといい匂いがしてくる。
看板には「牛タン」「ソーセージ」「焼きそば」などいう文字とともに、自分たちにはよくわからないがとにかくおいしそうな料理の写真がでかでかと載っている。
「何かいっぱいありすぎてわかんねー!」
「おお…すげえや、あっちのほうまでずらっとあるぜ」
しかも、それがずらり、と列を為す…
どの店にしようか、見て悩むだけでも時間がかかりそうだ…
「うーむ、めちゃくちゃ数があるな。悩んじまうぜ…」
長考に入ろうとした一角鬼、だがそこで末弟が気づいてしまう。
「…あっ」
「うめえわ、これ」
…見ると、次兄の二角鬼。
いつの間に買ってきたのか…ほくほくと湯気を立てる何かを喰っていた。
彼の手の中、「もちもちポテト」と書かれた包みの中に、にょろにょろと長い、揚げたらしきジャガイモ。
「お前…早すぎるだろ」
喰い意地の張った弟にあきれながら、一角鬼もそれをつまんで口に入れる。
ほくり、とほどける、なめらかな塩味。
「うまいうまい、揚げたてうまい」
「ずるいずるい兄ちゃんずるい俺も俺も」
「もっと寄越せ二角鬼」
男三人、あっというまに平らげてしまう。
そして、もちもちポテトで少しだけ食欲が満たされた兄弟は、とりあえずスタジアムの中に入ることにしたのだった。


「そういえば、チケット?はどんな席なの?」
弟に問われ、おもむろに一角鬼はチケットを取り出す。
自分たちではよくわからないため、人間社会に潜伏し情報を集めている百鬼帝国諜報部に依頼して手に入れたのだが…
「どれどれ、えーと…」
「…よくわからん」
「?」
細長い紙きれには、いろいろ細かい字で書いてあり、いまいち要領がつかめない。
球場案内図を見るが、それも見方がよくわからない。
三人雁首をそろえて、案内図の前で首をひねっていた、その時だった。
それを見かねたのか、つなぎを着た案内人らしき青年が近寄ってきた。
「お困りですか?」
「あっ…えっと、これはどこだろう?」
「ああ…お座席ですね?えーっと…」
青年は三人のチケットを見やり、図を示しながら説明してくれる。
…が、彼の答えは、三人の思いもよらないものだった。
「こちらの2枚は、三塁側の内野指定A。こちらはホーム外野応援席ですね」
「え?!」
「つまり、これ…俺たち全員同じ場所じゃない、ってことか?」
「はい」
何ということか。
諜報部の不手際で、まさかの兄弟バラバラ事件発生である。
「ええー?!そんなぁ…」
「ちっ、諜報部の野郎…適当しやがって」
「ど、どうしよう、兄貴?!」
混乱する二角鬼と三角鬼。
長兄は彼らを見やり、少しだけ困った顔をしたが…はっ、と短く息を吐いて、肩をすくめる。
「まあ、いいさ…それに、違う場所を選んだってのも、『偵察』としたらいい口実になるだろ」
「そりゃそうだけど…」
「何だ、お前ら?…心配するなよ、俺がこのガイヤオウエンセキ?ってところに行くぜ」
「!」
「お前らは二人でそのナイヤシテイAってところに行きな」
そう言いながら、一角鬼は外野席チケットを取り、残り二枚を二角鬼の胸に押し付けた。
「いいの?」
「構わねえよ」
「でも、一人じゃ危ないかも…」
「気にすんなって!大丈夫だぜ」
豪快な兄者はけらけらと気楽そうに笑ってみせる。
大体、ここはヤキュウ場…
観客として見に来た自分たちに、どんな脅威があるというのか。
「それじゃ…場所は違うけど、楽しもうぜ!」
「う、うん!」
「兄貴も、何かあったらすぐ連絡くれよな!」
そう言いながら、三人はそれぞれ教えられたゲートに足を向けた。


「ようこそ、マリンスタジアムへ!」
「は、はい」
チケットもぎりのお姉さんに笑顔を向けられ、ちょっと照れ笑いする三角鬼。
次兄と末弟は、無事ゲートを潜り抜け、マリンスタジアムの中に入った。
驚いたのは、「カバンを開けてください」と言われ、中身を見られたこと…
何だかよからぬものを持ってこないように、ということらしいが、そんなことは予想もしていなかった二人は、少しばかり面食らってしまった。
まあ、それでも、ともかく、無事中に入れたわけだ…
ざわざわと人が行きかう音が高い天井に反響していく、たくさんの人間たちがこのコンコースに…グラウンドと観客席を取り巻くスタジアムの大通路…あふれている。
「それにしても、すごい人だね…」
「ああ…うーん、この『通路番号』のところから、もっと中に入れるみたいだな」
先ほどの案内人に教えてもらった通路番号、それを探して二人はてくてくとコンコースを往く。
―と。
コンコースを飾る大きな装飾が、行く手に現れる。
「見て!これ、すごい!」
「おお…!」
三角鬼が、壁にあるそれに目を止めた。
同じくそれに目をやった二角鬼の表情が、笑顔に変わる…





―それは、大きなユニフォームを模したパネル。
そのあちこちに、マジックでメッセージが書かれている。
彼らが愛するチーム・マリーンズへの叱咤激励…
大きい文字、小さい文字。子どもが書いたようなかなくぎ文字も、さらさらと書かれた達筆も。
どれもこれもが、精一杯に叫んでいる。
選手たちに向かって、叫んでいる。

「…人間どもも、本当に『ヤキュウ』が好きなんだな」
「うん…」
見上げる二人の瞳に、感嘆の色。
自分たち鬼より、遥かに脆弱で愚昧な人間ども…
だが、そんな人間であれ、熱く燃える血潮は同じなのだろう。

祈りのモニュメントをしばし、見つめ。
「さあ、行こうぜ!」
二角鬼は自分の席に行こうと弟を促す。
「大丈夫かなあ、兄ちゃん…」
と。
足取りがやや重くなってしまう、末弟の三角鬼。
心やさしい彼は、人間だらけのこの場所でひとりぼっちになってしまった兄を案じているのだ。
「三角鬼、そんな心配するなよ!兄ちゃんなら大丈夫さ」
「うん…でも、せっかく初めてのヤキュウ観戦なんだからさ、三人一緒に見たかったなあ…」
「そだな…」
三人がずっと願ってきたヤキュウ観戦、初体験だからこそ三人で共にそれを分かち合いたかった…と、少しばかりしょんぼりする二人。
…が、そんなことを言っても、今更だ。
三人で一緒にヤキュウを見る、その機会はまたそのうち巡ってくるだろう。
だから、今日。
今を楽しまねば。
にっ、と笑顔一つ。二角鬼は弟に笑って見せて。
「…おい、まだ試合が始まるまで間があるから、何か喰おうぜ!」
「!…うん!」
そう言って、三角鬼を伴い、先に見える売店らしい場所に歩き始めた。



一方。
ホーム外野応援席へと向かった、一角鬼が目の当たりにしたのは…信じられないような光景だった。
白。
それは、白だった。
(く…何だ、これは?!)
見渡す外野席、男も、女も、皆一様に、白。
白の軍団が、その場を占拠していた。
(…ここらにいる連中…ほとんどユニフォームを着ている!)
そこにいるほとんどの者が、上半身に白いユニフォームをまとっているのだ。
その胸には"M"、それは誇らしき彼らのチームの徽章。
(何故だ?!まさか…これが何かのシキタリなのか?!)
あまりに一体感がありすぎて。
一面が白に染まるその様は、もう「制服(ユニフォーム)」というものを通り越して、まるで…一つの生物、巨大な群体のようにすら思える。
…つうっ、と、一角鬼の頬に、つたう汗。
威圧されていた。そのエリア全体が放つ空気に。
気おされてしまったその怯んだ心を奮い立たせなくては、その群体の中を割って自席へとたどり着くのも難しく感じるほどだ。
そう、そのためにはアレがいる…
あの群体の一部となるために、その威圧感の一部となるために。
…ユニフォーム。
通路を通りコンコースに出た一角鬼は、何やら応援グッズを売っているワゴンに向かう。
「…ユニフォームが欲しいんだが」
「はい!どちらのものに致しましょう?」
「う、ううっ…」
ボブカットの似合う、器量良しな女性店員が明るく問いかける。
しかし、一角鬼は困惑しきりだ…
何せ、彼女が示したユニフォーム…やたらとたくさんあるではないか!
「…と、とにかく白で!」
「はい、ホーム用ですね!」
目線を左右に数回往復させた後、それでもどれを選んでいいかなどわかりようもない。
ともかく、あの集団と同じ色であれば、浮きはしないだろう…
そう考えた彼が指差した白いユニフォームを、店員は「ホーム用」と呼んだ。
「ほーむ?」
「ここはマリーンズの本拠地ですので、選手はホーム用の白いユニ。
他の球場に行くときはビジター用の黒を着るんです」
「そうなのか…」
どうやら、この場所で戦う時と、他の場所で戦う時で服の色を変えるらしい。
なかなか面倒そうだ、と一角鬼は思ったりした。
「選手ネーム入りにしますか、それとも無地?」
「む、無地で」
どうやらあらかじめ選手の名前や背番号がつけられているものもあるらしいが、まだよくわからない。
とりあえずあの中にいられるだけの偽装でいいのだ、とばかりに、一角鬼は無地のユニフォームを指さす。
6500円のお買い上げである。
「タオルはいかがですか?この歌詞入りタオルとかおすすめなんですけど」
「そ、それもくれ」
店員に言われるままに、ホイホイと札を差し出す一角鬼。
軍資金として諜報部から受け取った日本の金…
諜報部員たちが非合法な手段で、しかも官憲に目をつけられぬよう秘密裏に準備していた金。
彼らがこの場面を見たら、きっと怒りのあまり鼻から血を吹くか、口から泡を吹くであろう。
世界征服のための作戦に使われるべき貴重な金が今、千葉ロッテマリーンズにやすやすと吸い込まれていく。
「後、このチケットホルダーもあると便利ですよ~!応援の時、ポケットからチケットが落ちたら大変ですからねー!」
「あっ、じゃあそれも!」
嗚呼。
さらに1300円、飲み込まれた。

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久々にサイト更新しました

ブログで先行して投稿している、やきう観戦こばなし
「百鬼百人衆角面鬼兄弟、やきう場に推参す。」を更新しました(*˘◯˘*)!

3年ほど前からガチでやきう観戦しています
あと、今年の8月に神宮球場に行ったら、「12球団本拠地全制覇」を成し遂げられる予定(*°◯°*)!


みんなも行こうぜ!やきう場!(*^○^*)


なお、シリアスな話も同時並行で進めています
ですが、前のパソコンが壊れた時、データをサルベージできなかったので
エルレーンさんとあしゅら男爵・ブロッケン伯爵の話のつづき、
最初から書き直しなんですよね…
これがつらい(;´д`)トホホ…

拍手[0回]

百鬼百人衆角面鬼兄弟、やきう場に推参す。~Prologue~

闇が蠢く。
憎悪と怒気を糧として。


「ええっ?!」
「に、兄ちゃん…それ、マジで言ってんの?!」
「ああ」


闇が揺らぐ、弟達の驚愕で生まれた波で。
だが、長兄は不敵に笑い返す、それは自信と傲慢。
「さっき説明したみたいな理屈をつけ足せば、ぐちぐち言われることなくできる…と思う」
「そ、そうかなぁ…」
末弟の戸惑いの言葉には、ただ苦笑で返すだけ。
次兄も最早何も言わず、ふうっ、と息をつくだけ。


闇が蠢く。
憎悪と怒気を糧として。
そのカタマリは―真っ白な、何かをその手に握っていた。
赤い刺繍の縫い目も鮮やかなそれを、「人間」は何と呼ぶのだろう―


「俺は行くぜ、止めても無駄だ」
「兄ちゃんだけずるい!俺も行くッ!」
「二角鬼、お前は?」
「そりゃ、うまく行くなら…俺も行ってみたい!」
「じゃあ、決まり…だな」


だが、弟たちも、兄の突然の提案に驚いてはいるが、決して反対ではないようだ。
いや、むしろ、彼らだって共に行きたいのだ―その場所へ。
そして、そんなことはとっくに長兄も理解していた。
だからこそ、こんな突飛な計画をぶち上げたのだ。
次兄と末弟の熱のこもった返答に、長兄はにやり、として。
弄んでいた右手の中のソレを…真っ白なソレを、ぼーん、と軽く投げ上げ…
ぱしり、と乾いた音が鳴る。
受け止めた彼の右の手の中、硬球がかすかに皮の匂いを彼の手に残す。



「さっそく行こうぜ…ヒドラーの野郎のところへ!」



「はあぁ?!貴様ら、何をアホなことを言っておる!」
ヒドラー元帥の執務室。
鬼の軍団・百鬼帝国の猛者たちを束ねる王であるブライ大帝の信任も厚い、軍事部門の最高責任者…
その配下たる帝国の精鋭たち、百鬼百人衆のメンバー、角面鬼兄弟…
唐突に執務室に押し入っては唐突なことを抜かす彼らの直訴、その内容のあまりの珍妙さに思わず声を荒げてしまう元帥。
しかしながら、三人は涼しい顔でそれを聞いている。
「俺たちゃいたってまじめなつもりですがね、ヒドラー元帥」
「いや、だが…貴様ら、」
長兄の一角鬼は、何処か演技じみた口調でそう言って、わざとらしく両腕を広げてみせる。
だが、ヒドラーは軍団長ともいえる立場だ。
帝国に危険が及ぶかもしれない無用の行動なら、部下に実行させるわけにはいかない。
「人間どもの偵察、とはいっても…何故、…ヤキウ場?とやらのところへ行くんだ?」
元帥の疑問は、至極もっとも。
何故、それが国家を動かす大物が集まる政府機関・国会や、多くの情報が得られるマスコミではないのか。
何故、ヤキウ?とかいうモノをする場所なのか?
何故、わざわざ軍のエリートである百人衆がそこを偵察したがるのか?
「そんなことなら、早乙女研究所へでも」
「そこなんだぜヒドラー元帥!」
と。
元帥が抱いた当たり前の疑念を、一角鬼はこれまたわざとらしい大声でかきけした。
そして、きっ、と、元帥をまっすぐに見据え、主張する。
「俺たちは、あまりにもゲッターロボ…早乙女研究所のところに注力しすぎじゃないですかい?」
「む?」
ここで、えへん、と、軽く咳払い。
角面鬼兄弟の次兄・二角鬼が、兄の言葉に加えて、続ける。
「いいですか?我ら百鬼帝国の最終目標は、この世界全てを手に入れることでしょう」
「…」
「それを邪魔するのが早乙女研究所…ですが、」
世界征服という大望を現実のものとするべく、そこに至るまでの標識(マイルストーン)を、もっと細かく打ち込んでいくべきだ、と。
「もうちょっと、『足場』ってやつを固めていくためにも…日本の各都市の制圧は必要でしょう」
ゲッターロボ、早乙女研究所というわかりやすい標的のみならず、地固めをしていくべきだ、と。
「そのためには、諜報部隊だけに任すんじゃなく…実際に百鬼ロボに乗って戦う俺たち百鬼百人衆がもっと現地を見ておくべき!」
二角鬼は理論で攻め込んでいく。
奥底にある、彼らの真の目的のことなど、欠片すら見せるふし無く。
うぬう、と、元帥がうなる。
疑り深く執念深いヒドラーは、それでも納得しきれていないようだ。
まず、第一に。
「だ、だが…その『ヤキウ』?というのは何なんだ?何故そこを偵察に?」
そう、ヒドラーは…いや、彼だけではない、百鬼帝国のほとんどの者は「ヤキュウ」を知らないのだ。
「おや、ヒドラー元帥ほどの方でもご存じない?」
が、それこそ彼らが好機。
やっと来ましたかその質問が、とでも言いたげな顔で、三兄弟がずずい、と前に歩み出た。
「『ヤキュウ』とは…世界の多くの人間どもが狂乱するスポーツなんだぜ!」
「大人から子供まで、幅広い年齢層をカバーしてるんだ!」
「だから、いつもたくさんの人間どもが『ヤキュウ』を見るため、そこに集まるんです!」
ここが勝負どころ。
なだれ込むように、三兄弟が一気にまくし立てる。
果たせるかな、元帥の表情が少し…変わった。
それを見逃さず、三人はさらに押し込んでいく。
とにかく何でもそれっぽいことを言えばいいのだ、理屈とサロンパスは何処にでもつく。
「それに、大量の人が集まる場所…その全員を何らかの方法で洗脳すれば、戦力の増強にもなるだろう!」
「そうそう!そういう大規模な作戦をちゃんと立てるためには、やっぱ俺たち、自分自身で見に行かなきゃダメだと思うんです!」
「それこそ、何処に何があるか、どういうタイミングで実行するのがいいか…とか、細かいことは自分の目で見たものしか信じられないですし!」
「ぬう…」
一気呵成の主張が途切れ、しばしの間。
腕組みした元帥が少し考え込むような様子を見せ。
十数秒置いて、はあ、と、脱力したかのようなため息をつき。
…そして。
「…まあ、構わん。他の百人衆の邪魔をしたり、無駄に目立って早乙女研究所のアホどもに見つかったりはするなよ」
「!…はい!」
「やったあー!」
「ありがとうございまーす!」
そう、それこそが三兄弟がヒドラーからひねり出したかったひとことだ!
望み通りの許可を得た角面鬼兄弟、文字通り飛び上がって大喜びだ。
ハイタッチなどかまして浮かれ騒ぐそんな姿は、当たり前だが、ヒドラー元帥を急に不安にさせた。
「…何だその喜びようは。お前ら、まさか何か…」
「んじゃこれで失礼しまあーっすぅ!」
「あっ、適切な場所を選ばなきゃいけないから、何回か別の場所も見に行ったりしてもいいっすよねぇ!」
「後、現地での費用も経費で落ちますよね!よろしくおなっしゃああああーっす!」
「おい、角面鬼兄弟!」
ヒドラー元帥が怒鳴っても、もう遅い。
「構わん」というヒドラーの言質を取った以上は、もう(まさに)鬼に金棒だ。
矢継ぎ早に聞き捨てならない条件を言い放って、脱兎のごとく執務室を飛び出す三馬鹿兄弟。
彼らに向かって思わず伸ばした右手が、所在なくだらり、と垂れ下がる。
(まったく…あいつら、何を企んでいるのだ?!)
ちっ、と舌打ちが自動的に漏れたのは、元帥の疑惑と苛立ち。
しかしながら、そんなヒドラーでも、さすがに予想だにしていない…
まさか、彼らの目的が「作戦にかこつけて、とにかくヤキュウを見たい」…そんなすっとこどっこいなモノだろうとは。

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うちのサイトの「百鬼百人衆 角面鬼兄弟」について

うちのサイトのゲッター小説に出てくる「角面鬼兄弟」について、ちびっとまとめ
これから先書くつもりのプロやきう観戦ショートストーリーを読んでもらう時に役立つかも(*˘◯˘*)

*元ネタは、ゲッターロボG「第三十四話 対決!百鬼三兄弟」から。
長兄の一角鬼が「清水一角」という人間に化け、浅間学園野球部キャプテンのベンケイに勝負を挑み、仲良くなって研究所に入り込む…という作戦を立てました。
長兄…一角鬼
次兄…二角鬼
末弟…三角鬼
私のつくる話の中では、年齢は「日本の高校生(16~18才)程度」としています。
また、長兄の一角鬼は、同じ百鬼百人衆の鉄甲鬼の同期…としています。

*ここから、「野球に興味を持つ」という点を考え、書いたのが次のこばなしです
Grab the shining Star, α Canis Minoris
http://yudouhu.net/getter/gteki3.html

*また、彼らが野球を研究するために使ったマンガ「巨人の星」に興味を持った、というところで話を作り始めたのが、オリジナルでつくった百人衆の少女の話です。
脳筋だが仲間思いの一角鬼の話でもあります。
主将と子鬼のものがたり
http://yudouhu.net/getter/syusyou1.html

…というわけで、結構私の中で気に入っているキャラクターなのであります(*°◯°*)
また、私は3年ほど前から、ガチでガンガン野球観戦に行っていたりするので、
それを組み合わせて「やきう場紹介こばなし」を書いてみたいと思っています
期待しないで待っていてください(*˘◯˘*)!

角面鬼兄弟


一角鬼、人間の偽装している時はこんな感じ


車弁慶と仲良くなった一角鬼

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ゲッターの(不定期)連載はじめるます(*˘◯˘*)

こんにちはこんにちは(*^○^*)

というわけで、夏休みに入って身体がちょっと楽になったので、久々にこばなしを…
とはいっても、この「こばなし」めっちゃ長くなりそうです。
以前からぼんやり考えていた、帝王ゴールの娘・恐竜王女ゴーラの話です。

何回もこのブログで書いている気がしますが、彼女の出てくる「悲劇のゲッターQ」は、
アニメ版ゲッターロボにおいてはいくつもの大きな矛盾を生んでしまう話です。
ですが、それでも、「人間」「ハ虫人」の間で揺らいだ彼女の物語は、
とてつもなく哀しくも魅力的です。

彼女は、何故、帝王ゴールの娘にも関わらずに危険な作戦に出されたのか。
彼女は、何故、ゲッターQの設計図を盗んですぐに恐竜帝国に戻らなかったのか。
そして、彼女は、何故、「戻って」来てしまったのか…

それを、短い話をつなげて書いていきたいな、と思っています。
ここでまず出して、たまったらホームページのほうにHTMLにして置く予定です!

なお、これと並行して、コメディ的なものもどんどん書いていきたい…
哀しいのばっかりだとつらくなっちゃう(*˘◯˘*)!
私の趣味「プロやきう観戦」と合わせて、百鬼百人衆の角面鬼三バカ兄弟の話も書きたいと思ってますwwwwwww

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