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それ行け!早乙女研究所所属ゲッターチーム(TV版)!

70年代ロボットアニメ・ゲッターロボを愛するフラウゆどうふの創作関連日記とかメモ帳みたいなもの。

恐竜王女の御幸(ミユキ) 運命は彼女を選択した

恐竜王女の御幸(ミユキ) 運命は彼女を選択した

人間たちがこの世の春を謳歌している、地上。
その遥か下。下。下の下の下。
灼熱のマグマが広がる地層に、とてつもなく巨大な街…いや、国がある。
ヒトならぬ、だが二足で歩行し、高い知能を持ち、秩序と社会を持つイキモノが生きるその国…
ハ虫類から進化した彼ら、ハ虫人たちの国…恐竜帝国。
まだ人間がネズミの親戚であったころ、彼らこそが地上を我が物顔に歩き回っていた時代があった。
それこそ、高度に発達した文明を持ち、自然と調和し…
しかしながら、彼らの歴史は突然、闇一色に塗りつぶされる。
怨嗟と悪夢、憎悪と混沌が、彼らのきらめく未来を塗りつぶす。
それはかつて、ただの地を這う蜥蜴だった自分たちを、知性あるイキモノへと変えた…
「知恵」を与えたはずのモノ、だった。
目に見えぬ邪悪が、天空に荒れ狂い。
音も鳴らぬ悪辣が、人々を傷つけ殺し。
ハ虫人たちは苦悩し、苦悶し、苦難の果てに…地上の楽園を捨てた。
持てる限りの技術力を駆使し、地下の世界へと逃げ去った。
眩しいばかりの太陽の光は、もう見ることができない。
陽光に照らされる地上は、最早あの邪悪なる女神の世界―


ハ虫人たちは、この屈辱の歴史を、「神話」の形で子孫たちに伝えた。
自分たちを地獄に叩き落した女神を、その神話の中でこう呼んで―



「滅びの風(El-「風」raine-「滅び」)」



だが。
ハ虫人たちの願いは、変わらなかった。
地上への憧れは、代を経て、また代を経て、強くなっていく。
あの世界へ。
太陽のきらめく、あの世界へ。
そう、いつか、今度こそ、あの邪悪なる女神の呪いを克服して―!



「…それは誠、なのか」
恐竜帝国・帝王の間。
報告を受けた帝王ゴールの表情は、硬く硬く強張っていた。
大司祭から受けた言葉が、あまりに唐突すぎ、そしてあまりに…残酷すぎたため。
「…はい」
老いた大司祭は、帝王の威厳の前にひれ伏しながら。
それでも、己が受けた神々からの言葉を伝える。
その衝撃的な言葉に色めきだったのは、帝王に使える重臣たちだ。
帝国軍大将バット将軍、科学技術庁長官ガレリイ長官…
普段は反目しあい足を引っ張りあう、まさに犬猿の仲たるその二人も、同じことを老婆に怒鳴っていた。
そう、それほどまでに、彼女の言葉は許されざる、まさに不敬なる言葉。
「何と言うことを!お主、自分が言っていることがわかっておるのか?!」
「『賢(さか)き尖兵』として、あの…ゴーラ王女様を送るべき、だと?!」
恐竜帝国の命運をかけた地上侵攻作戦、その第一歩。
その状況を探るべく放たれるべき、恐れを知らぬ勇者。
魑魅魍魎の跋扈するだろう、人間どものあふれる地上に送るべき人物。
それが、何故…
「馬鹿げておる、危険すぎるわ!何故、王女様でなくてはならんのじゃ!」
「それを問われたとて、このおいぼれに何がわかろうか!」
しかし、大司祭とて、罵倒されたとしてもそう言い返すことしかできない。
彼女は帝王の命どおりに神々に祈り、そして得た答えを伝える。
たとえ、神々が下された答えが、どんなに非道なものであったとしても。
「…ただ、宣託が。そう告げたのじゃ…それを、ワシはそのままお伝えしておるのみ」


彼女が帝王ゴールから受けた命。
旧き神々に祈り、託宣を得よ、と。
永い眠りの後、再び訪れた活動期…
ハ虫人の長年の悲願たる地上制圧、それを正しく成し遂げるために、まずは地上の状況を知らねばならない。
そのために送り込むべき、勇敢なる「賢き尖兵」…
それに選ばれるべきは誰なりや?
旧き神々は誰をお示しになるのか?


「やりなおせ!そんなもの、何かの間違いに決まっておる!」
「言われずとも!」
バット将軍の指弾に、きっ、と老婆は睨み返し、怒鳴り返す。
「言われずとも!ワシは…何度も祈り、神々に答えを乞うた!」
何日も、何日も。
同じ問いを偉大なる神々に繰り返す、という愚行を犯してすら。
だが、彼女がそうせざるを得ない、それほどまでに神々の答えは残酷だった。
「だが、同じじゃ…幾たび繰り返そうと!神々の示す答えは、ゴーラ王女様を指す!」
なじられる老婆は、目を怒りに爛々と燃え上がらせながら、それでも言を変えない。
彼女自身が出した答えではない。
そう、これは、旧き神々が与えた答えなのだ、と。
「この答えが意に添わぬなら、今すぐワシを斬り殺し、別の者に占わせればよかろう。
この婆が偽りを申しておる、そう思うのなら!」
老婆は曲がった腰を、それでもしゃん、と伸ばそうとしながら、はっきりと言い放つ。
その顔には、自負。
この祭政一致の国家たる恐竜帝国において、長きにわたり神々の言葉を承る司祭として生きてきた、という自負。
―すなわち。
神託に間違いはない、という自信。
たとえ神々が命じる内容が、どんなに酷薄なものであろうとも―


「…」
「…」



「だ、だが…ゴーラ王女様は、帝王ゴール様の長女であらせられる…王位継承権を持つ方を、そんな役目になど」
バット将軍の喉から、かすれ声が反論を絞り出す。
何より帝王の子は、次代を担うべき存在。
帝王を継ぐべき存在が、もし地上で果ててしまったら…?
「…王位継承権で言えば…『第二位』、でいらっしゃる」
「!…貴様、」
が。
ガレリイ長官がぽつり、と漏らした一言に、バット将軍の表情が変わった。
しかし、帝王の御前…バットとて根っからの阿呆ではない、その次に続くセリフは飲み込んだ。


―すなわち、「王位継承権『第一位』ではないから、たとえ死んだとしても問題ないと思っているのか?」と。


恐竜帝国は古く長い歴史を持つ…
そう、それこそ、現在地上に大量に蠢いているサルどもの子孫のものよりも、遥かに長く。
それ故、王政を構築する規範やしきたりも、また多く、古く。
帝王ゴールには、御子が二人。
長女は、ゴーラ…側室のひとりの生んだ、娘。
長男は、ゴール三世…正室の生んだ、息子。
恐竜帝国の長きにわたるしきたりは、彼らのたどるだろう未来を、彼らがこの世に生まれ落ちた瞬間に塗り分けていた。
恐竜帝国の帝王となるべきは、まず、男子。
そして、第一夫人の子女たるべし、と。
そのルールは、暗にゴーラに告げている。
お前はあくまで「王位継承権第二位」、ゴール三世に何らかの事態が起こった場合の「スペア」なのだ、と。
だが…


…がんッ。


はっ、となった二人が見返る先には、玉座におわす帝王。
不愉快気に玉座のひじ掛けをこぶしで打った鈍い音が、強制的にガレリイたちの会話を終わらせた。
必然的に、帝王の間には静寂が満ちる。
不愉快な、居心地の悪い、音のしない、間。
いや、その場にいる誰もが、帝王の様子をびくびくと伺っている…


「…帝王ゴール様」
「…」
「我々は、一体…どうすれば」


その間を割ったのは、困惑に満ちたバット将軍の声。
帝王は、無言。
将軍も、それゆえに、それ以上の言を継げない。
再び、生ぬるい無言がその空間を満たす。



「…」



十数秒か。数十秒か。それとも、それは数百秒か。



「…わかった」



―ようやく、と。
その、居心地の悪い空白を断ち切ったのは、吐息交じりの声。
帝王ゴールは、いったん目を伏せ…
再び眼見開き、一息で答えを吐き出した。
己の迷いも全て、捨て去らんとしているかのように。


「偉大なる神々が、我々にそう告げたのならば」

「…それに従うことこそ、この恐竜帝国の栄光がため」


「えッ?!」
「ゴール様!」
ガレリイ長官、バット将軍の両者ともが、動揺もあらわに声を上げる。
帝王はおっしゃられたのだ。
愛娘を地上への間諜として送り出す、と。
邪なる人間どもの蔓延る、あの場所へ…
それは、種族の命運を賭けた大きな作戦であり、また重大な選択。
他の者ではなく、彼の方自身の血を分けた者を、と…
…嗚呼。
だが、見よ。
偉大なる帝王の、その表情を。
その眼には光なく、感情を押し殺すあまりに、その表情はもはや色すらない。
「ゴーラにはわしが伝える」
「…」
「ガレリイ、バット。『賢き尖兵』を地上に放つための準備にかかれ」
「は、はっ…」
だから、それ以上バットたちも何も言えはしない。
何が言えるだろう、覚悟をした帝王を前に、親を前に。



「神々が、ゴーラを選んだのならば…」



帝王ゴールの声音は、厳かで落ち着いていた。
だが、だからこそ―傍仕えの者たちは確信する。
それは、諦念。そして、信念。
恐竜帝国の彼岸・地上進出を達成するために、己が愛しい娘を犠牲にするという―!



「その加護が、必ず。我が娘をお守りくださるだろう」



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