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それ行け!早乙女研究所所属ゲッターチーム(TV版)!

70年代ロボットアニメ・ゲッターロボを愛するフラウゆどうふの創作関連日記とかメモ帳みたいなもの。

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誘拐狂詩曲(Kidnap Rhapsody)~a capriccio~Movement 4

「百鬼帝国…か」
巨悪の巣窟、ここは悪の天才科学者ドクター・ヘルが居城たる地獄城。
光子力研究所殲滅のために派遣した部下たちの報告は、前もって聞いていたとはいえやはり衝撃的であった。
「オーガの国とはな…そんなものがあろうとは」
巨大ロボットを製作できるほどの高い科学力を持つ亜人どもの国があり、そしてそ奴らが自分たちを攻撃してきたとは…
長いひげを撫でさすりながら、不快そうに一人ごちるヘル。
「…」
「…」
主の前にひざまずく異形二人は、何も言わぬままその様を見守っている。
老科学者はしばし、不愉快気にうなりをあげながら思考していたが…
やがて、ふう、と長いため息をつき、何とか気持ちを切り替えようとした。
「どちらにせよ、我らに牙剥くなら容赦は出来ん。切り払うのみよ!」
「はっ…!」
ヘルの瞳が、野望に光る。
新たな敵勢力の出現は脅威ではあるが、自分たちの敵はあくまでマジンガーZ、あくまで光子力研究所…
最終目的たる世界征服の前に角持つ亜人たちが立ちはだかろうと、それはその時に考えればよいこと!
「あしゅら!ブロッケン!だが今はともかく新機械獣を作らねばならぬ!
開発を急がせよ!」
『ははっ!』
下された命に、同時に応じるあしゅら男爵、ブロッケン伯爵。
二人の声が、玉座の間の空に混ざって散っていった。


「うぇ~い…グラちゃんおひさ~」
「さっき会ったばかりだよ…」
疲労困憊の鉄十字兵・ルーカスの前に通りがかったのは、友人の鉄仮面兵・グラウコス。
顔はお互い仮面やマスクで見えないが、歩みがふらついているのは身体を酷使した証拠だ。
二人ともグールで帰還したとたんにまた警備のシフトを組まれており、地獄島をゆらゆら幽鬼の様に見回っているのである。
「てゆうか、帰ってすぐ休みもなく次のシフトとかむごくね?俺死んじゃう」
「まあまあ…機械獣製作チームに比べたら全然マシらしいよ?」
「そりゃそうか、4体つぶれたから埋め合わせがなー!」
いつも通りもちゃもちゃしゃべくりながら地獄城回り警備ルートを歩く二人。
―と。
グラウコスは遠くの空に目をやり、思い出したようにつぶやいた。
「…元気様とエルレーン様、無事に研究所に戻られたかな?」
「そ~りゃそうよ!」
へへっ、と笑いながら、へらへらとルーカスが答える。
「てゆうか、俺らみたいな子どもを誘拐する悪者なんざ、そうそう転がってませんって!」
「…確かに!」
彼の冗談に、グラウコスも笑って。
とりとめないおしゃべりをし続けながら、二人は仕事を嫌々ながらにこなすのだった。


ところ変わって、こちらは早乙女研究所。
「みんな!おかえりなさーい!」
「おかえりー!」
研究所の格納庫に、ぱたぱたと足音が鳴る。
早乙女元気と、エルレーンとの二人分。
忙しげに行きかうメカニックたちの間をすり抜けて、彼らは戻ってきたゲットマシンに駆け寄っていく。
早乙女研究所にゲッターチームが帰ってきたのだ(今度は普通に、ゲットマシン形態で飛行して!)。
一足先に戻ってきていたエルレーンたちは、彼らの出迎えに走ってきたのだ…
…が。
「…」
「…」
「…」
リョウも。ハヤトも。ベンケイも。
その顔には疲労がべっとりと色濃く、またそのまなざしも暗い。
いや…
正確には「暗い」ではない、「いぶかしげ」なのだ。
こちらを見返すゲッターチーム、三人の不審感たっぷりの視線。
そのあたりに二人は瞬時に気づいてしまったので、
「ど、どうしたの?すっごい疲れてるねぇ」
「げ、元気くん、だめだよぅ…リョウたち、わるいひとたちにだまされて大変だったんだよ?」
やはりこっちも瞬時に演じる。緊張のあまりか、ちょっと声が上ずった。
だが、経験値の少ない二人の演技はあまりにわざとらしすぎて、むしろ彼らの懐疑心をさらにあおりまくる…
「そうそう、僕たちがさらわれたんだってー!そんな変なウソつく人いるんだねぇ!」
「ほんとだねえ!悪いねえ!」
本当らしくしようと気張るあまりに大げさなくらい抑揚をつけるものだから、まるで学芸会だ。
そして、元気とエルレーンの猿芝居を見るゲッターチームは、無言。
「…」
「…」
「…」
「…」
傍に立つミチルも同じく、疑いの眼を二人から外さない…
…これは、まずい。
一刻も早く話題をそらそう、この場から去ろう。
「…と、とにかく、おつかれさまなの!大変だったんだから、しばらくゆっくりしてね!」
「そ、そ、そうだよ!スイカ食べる?!さっきお母さんが持ってきてくれたんだって!」
8つの胡乱な瞳にさらされながら、必死でその目線を避ける怪しい二人組。
努めて明るくしようとするものだから、それはそれはもう凄まじく嘘臭く響くのだ。
「…」
「…」
「…」
「…」
なおさらに8つの瞳が不審の色を増す。
もう怖くてリョウたちの顔を見られない…
ので、元気とエルレーンはくるり、と方向転換。
「わあすいかってなあに?おいしいもの?早く食べたいなあー!」
「そうだよお姉ちゃん!さ、さあいこー!」
リョウたちの返事も聞かぬまま(怖くてとても聞けやしない!)、あさっての方を向いて歩きだした。早足で。
「…」
「…」
「…」
「…」
リョウも、ハヤトも、ベンケイも、ミチルも、無言。
疑念でうろ暗く塗りつぶされた目で、元気とエルレーンの背中を見やっている…
しかし、残念ながら。
貫き通すように見つめても、真実は看破できるはずもなく。
そこに残ったのは、強烈な緊張感で体力気力を奪われた凄まじい疲労感と、
あしゅら男爵の謎の手紙に踊らされて光子力研究所まで無駄に往復してきた徒労感と、
そして、
「…」
「…」
「…」
「…」
ゲッターライガーが開けた、格納庫床の大穴だけだった。


「…ば、ばれないよね」
「だいじょぶ…きっとだいじょぶ」
そして、早足で格納庫から離脱する二人組。
どきどきと心臓が速い鼓動を打っている、下手な嘘と演技のせいで。
けれど、リョウたちゲッターチームには心の底から申し訳ないが(そして格納庫に被害を出された早乙女博士にも!)…本当のことは言えやしない。
人的被害は何もなかったのだし、結果として自分たちは百鬼帝国の攻撃を阻止したのだから…
もしもばれたらそう主張して、何とか許してもらおう。
「…ふ」
「ふふっ」
どちらからともなく、笑いがこぼれ落ちた。
今日。
元気とエルレーンには、共有する同じ秘密ができた。
あの、半男半女の異形のこと。
あの、首無し騎士のこと。
不思議な誘拐事件のこと…
二人の首にかかった革紐のペンダントだけが、それが本当にあったことの証左だ。
碧く煌めく石が、光を吸い込んでうっすらとはねかえす。
鈍く輝く、海のような碧。
エルレーンの胸元で、あの女(ひと)がくれた火龍石のペンダント、その紅と対を為して揺らめいている…




くすくす、とかすかに笑いながら、二人は廊下を歩く。
いつも通りの日常、いつも通りの早乙女研究所―



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