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それ行け!早乙女研究所所属ゲッターチーム(TV版)!

70年代ロボットアニメ・ゲッターロボを愛するフラウゆどうふの創作関連日記とかメモ帳みたいなもの。

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お年玉だよ!ヒドラー元帥!(がんばれ!ヒドラー元帥シリーズ)

いつもの廊下も、気が抜けない。
24時間張りつめている監視システムカメラ以外に自分を見ている者などいないはずだ…と思っても、身体の緊張は解けない。
廊下の角を曲がるたび、新たな扉をくぐるたび、その物陰に何者かが潜んでいないかと入念に確認しながら、ここまでやっと、たどりついた。
「…。」
たどりついた、そこは…
とうとう目的地に至り、ヒドラー元帥は思わずため息をついた。
「…ふぅ」
…自らの執務室前。

見慣れたそこに戻るのは、たったの二日ぶり。
百鬼帝国の元帥ともなれば、降りかかってくる仕事は数知れず…
新たな年を迎えるめでたい年始と言えども、彼に許された休日はたったの二日。
ついたち、ふつかと家でゆっくりできたのがもう懐かしい。
たいがいの者の初出勤日は、三が日明けの四日となるが…
どんどんとたまっていくだろう仕事を思えば、気も流行る。
というわけで、哀しいかな…自ら休日を切り上げ、ヒドラー元帥は勤務に赴いたのであった。

だが、元帥たる彼が、まるで人目を避けるかのようにしているのはどういうわけだろう?
それも、他の者がいるはずのない、この日に…
それには、理由があった。
ヒドラー元帥は、恐れているのだ。
今日のこの日を。
今日のこの日に、我が身に襲い掛かってくるやもしれない災難を…


しかしながら、それは杞憂だったのかもしれない。
安堵しながら、彼は己が執務室の扉を開く…
内心、仕事中毒の自分を嗤いながら。
ともかく、この二日の間にたまった仕事の半分は片づけたい、と思いながら。


が、
ドアノブががちゃり、と音を立てた、その瞬間―!


「?!」
びいいいいいいいいいいいいいいいいいいーーーー、と、突然元帥の鼓膜をつんざくような警戒音!
「な、なんだ?!何の音だ?!」
鳴り止まない強烈なブザーに泡を喰うヒドラー。
耐えきれず耳をふさいでしまうも、それでもやかましい音は終わってくれない。
想定外の事態にわたわたしている元帥…
と、そこに、ばたばた、と走ってくる新たな音を彼は聞いた。
「やったあ!うまくいったね、蒼牙鬼ちゃん!」
「ふふん、ほら見ろ地虫鬼、やっぱり私の予想どおりなのだ!」
「―?!」
足音の主たちを振り返るヒドラー元帥の顔に驚愕の色が一気に走っていく…
ああ…
今日、この日!
こいつらだけには見つかりたくなかったのに!!
「過去のデータからすると、ヒドラー元帥がこの3日にハツシュッキンするのは読めていたのだぞ」
「よかった、僕の作った装置、ちゃんと働いたね」
「き…貴様ら?!」
ドアに仕掛けられた警報装置(いつの間に?!)を外してブザーを止めながら笑う地虫鬼、自慢げに鼻を膨らませているのは蒼牙鬼…
どちらも幼少ながらその高い技術力を認められ百鬼百人衆となり、海底研究所でグラー博士とともに百鬼メカロボット開発にいそしんでいる少年少女だが…
「な、何をしに来た?!」
「やだなあ、ヒドラー元帥…年明けと言えば…いつものアレ、ですよね!」
と、地虫鬼が、年相応のわんぱくそうな顔で言う。
「いつものアレ」、に妙なアクセントをつけて。
内心、ヒドラー元帥は舌打ちした…
ああ、それが嫌だから、人目を避け、仕事に赴いたというのに!
頭を抱えたい気持ちのヒドラーの前で、蒼牙鬼と地虫鬼は二人並んで、両手を出して、
臆面もなく言い放ったのだ―



『お年玉、くーださい☆』



建国30年、百鬼帝国。
その中での暮らしは、その王たるブライ大帝がかつて日本と言う国で暮らしていたため、そこでの年中行事が多く存在する。
なので、年始は新たなる年を祝うため、として、偉大なる大帝は臣民に休日をくだされるのだが…
その休日に付与してくるのが、この年中行事。
「年少の者に、年長の者が金銭を授ける」という…子どもたちからすれば、「ハイパーかっぱぎボーナスタイム」以外の何物でもないラッキーイベント。
そう、「お年玉」である!
この目の前のガキどもは、元帥たる自分に金をせびりに来たのである!

「くーださい!くーださい!」
ぴょんぴょん飛び跳ねながら要求を続けるガキ二名に、嘆息するヒドラー元帥。
「何を言うか!き、貴様ら、年末に特別報奨金ももらったであろうが!
子どもの癖にあんな大金をもらっておきながら、まだ金が欲しいというか!」
「それとこれとはベツモンダイなんだぞ。もらえるものはもらうんだぞ」
「グラー博士だってくれました!ヒドラー元帥もくれると思って来ました!」
まっとうなヒドラーの説教に、えへんぷい、とばかりに胸をはってぬけぬけと言ってのける蒼牙鬼。
一方の地虫鬼は、卑怯なことに比較対象を持ち出してお年玉授与の正当性を貫こうとする。
元帥は沈痛な面持ちで、二人を見返していたが…
はっ、と短く息をつき、気合を入れ。
「論外だ!仕事にならん、出てい…」
「出ていけ!」と一喝して、追い払おうと…は、した。
が、その寸前。
「くーださい!くーださい!」
「お年玉、くーださい!」
「うわっ?!な、何をする、貴様らー?!」
ヒドラーに飛びつき、ぎゃあぎゃあ叫ぶ二人組。
服を引っ張りぶらさがり、耳元で全力で叫び倒す。
『くーださい!くーださい!くーださい!くーださい!』
「う…」

そして、執務室にヒドラーの悲痛な声がこだまする。

「うおおおおおおおお…!」


「わあい、こんなにいっぱい!ありがとうございます!」
「ふふん、満足なのだ。礼を言うのだ、ヒドラー元帥」
「…。」
いくばくかの金を握らせたら、二人の子悪魔…いや子鬼は、ころっと態度を変え、すみやかに姿を消した。
あまりに現金すぎるその態度をいさめる元気は、今のヒドラー元帥にはない。
ぐったりと椅子に背を持たれ、ようやく訪れた静寂に目を閉じる…
(く…余計な出費と時間の無駄が!)
しかしながら、それでも勤勉な元帥は、今日ここに来た目的を忘れてはいなかった。
(ともかく、仕事をこなさねば…決裁せねばならぬ書類もたまっておるな)
気を引き締め直し、書類トレーに手を伸ばした…その瞬間だった。


公正公平なるブライ大帝は、能力の高い者を優遇する。
それ故、百鬼帝国百鬼百人衆には、老若男女様々な者がいるのであり。
年若い者であっても、有能ならば、いくらでも出世への道が開ける…


そう、蒼牙鬼と地虫鬼だけではない…
ヒドラー元帥を狙っている者は!


だんっ、だんっ、だんっ!
「ひぐうッ?!」
突如、自分の周りに落ちてきた、三つの黒い影!
驚愕のあまりひきつれた声を上げてしまったヒドラー元帥を囲み、影は高らかに言う…
「恭賀新年、ヒドラー元帥!一角鬼、推参!」
「同じく、二角鬼!」
「同じく、三角鬼!」
「か…角面鬼兄弟?!」
百鬼百人衆の三馬鹿兄弟こと角面鬼兄弟に取り囲まれ逃げ場をふさがれた元帥、その脳裏によからぬ予感が走る。
何故、こ奴らは今、ここに?!
ああ、そして哀れなるかなヒドラー元帥…
その予感は、まさしく的中していた。
兄弟は、にやあっ、と、笑って、元帥に言う。
三人並んで、両手を出して―


『お年玉、くーださい☆』


「は、はあああぁ?!お、お前ら、自分をいくつだと思っとる?!」
「ウッス!ピッチピチの、18歳でぇっす!!」
「まだ高等学校出てませんから!」
「何かのアンケートで、『お年玉は高等学校卒業まで』って意見が一番多かったらしいッスよォ!」
「し、知らん!知らん!早く出て…」
「くーださい!くーださい!」
「ひィッ?!な、何をする、無礼者ォ!」
「くーださい!くーださい!」
「くーださい!くーださい!」
「や、やめんかああああああッ!」
「くーださい!くーださい!」
「くーださい!くーださい!」


執務室から、聞く者の胸をえぐるような、ヒドラー元帥の悲鳴…
だが、無情にも、今日のこの日、この場所で。
その声を聞く者は、全て元帥からお年玉をせびろうとする、狩人たちだけなのであった…



だから、
がんばれ!ヒドラー元帥!
18歳未満の百人衆は、まだまだいるぞ!



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