ミユキの姿になり、早乙女家に帰ってきた恐竜王女ゴーラ。
わずかな時間を過ごし、そしてまた姿を消してしまう…
「早乙女家にお別れがしたい」と行って出てきたゴーラですが、
おそらくミユキの帰りを誰よりも喜んだのは、早乙女博士であり、
そして彼の妻、和子でしょう。
縁もゆかりもない、素性も知れない子どもを、養子とする決断ができた夫妻。
そんな夫妻だったからこそ、ミユキが失踪した時の哀しみは重く、
再び現れた時の喜びは大きかったでしょう。
ですが、早乙女和子は、この物語では…少なくとも画面上は出てきません。
彼女はどのようにミユキに相対したのだろうか?
そして…全てが終わった後、彼女は一体どう感じたのだろうか?
ゴーラ「ミユキは死んだわ!
それもたった今!皆既日食と同時にね!」
次にミユキが彼らの前に姿を現したのは、皆既日食が…もはや人間の姿にはなれなくなってしまう、恐竜の姿に戻るとき…あらわれた時。
彼女は、もうハナから死ぬつもりだったのだろう。
もう、それを知っている視聴者には、彼女が…ゴーラがゲッターチームに吐き捨てる挑発すら、痛々しくて悲しいものにしか聞こえない。
ゲッタークイーンは、ろくにゲッターロボに攻撃を仕掛けなかった。
不可避の死を、受け入れるつもりしかなかった。
だからこそ。
帝王ゴールの決断すら、悲劇を彩る一手になってしまう。
ただ、彼は、「娘を救いたかった」だけなのに…
帝王ゴール「おのれゲッターロボ!
ギンに援護させろ、このままではゲッタークイーンがやられてしまう!」
TVアニメ版ゲッターロボは、恐竜帝国編・百鬼帝国編(G)と二系統の物語があるわけですが、
その敵首魁、帝王ゴールとブライ大帝は、同じボスキャラでもだいぶ印象が違います。
有能さ、冷徹さを強く感じるブライ大帝に対し、
帝王ゴールは、シリーズ後半の「大魔神ユラー」の登場とともに加速した愚昧さの演出のせいで、どうも「暗愚」的なイメージがどうしてもつきまとうのですが…
ですが、ブライ大帝にはあまり感じられるエピソードがなかった「人間らしさ」を見せるエピソードを帝王ゴールは持っている、それがこの「悲劇のゲッタークイーン」なのです。
この物語での帝王ゴールは、一貫して「ゴーラの父親」であり、「ハ虫人の王」。
その二者が何より愛する娘を引き裂いてしまった、その苦悩と苦痛を背負い苦しむさまを、
彼はありありと見せているのです。